胃がん・食道がんとは?初期症状・原因・胃カメラ・治療を専門医がわかりやすく解説
「胃が痛いと胃がんではないか心配」「食べ物がつかえる感じがする」「ピロリ菌を除菌したけれど、胃がん検診は必要?」といった不安を持つ方は少なくありません。
胃がんは胃の内側を覆う粘膜から発生するがんです。一方、食道がんは、のどと胃をつなぐ食道の粘膜から発生するがんです。どちらも消化管のがんですが、原因や症状、治療法には違いがあります。そして最も重要なのは、胃がんも食道がんも早期にはほとんど症状がないことがあるという点です。胃がんは、かなり進行していても症状がない場合があることが国立がん研究センターからも示されています。
そのため、「症状が出たら胃カメラを受ければよい」ではなく、年齢やリスクに応じて適切な検査を受けることが重要です。
胃がんの基礎知識と進行度による分類
胃がんは、胃の内側にある粘膜の細胞ががん化することで発生します。最初は粘膜の表面近くにとどまっていますが、進行すると胃の壁の深い部分へ入り込み、リンパ節や肝臓、腹膜などへ広がることがあります。
胃がんは、がんの深さによって大きく早期胃がんと進行胃がんに分けて考えます。早期の段階で見つかれば、病変の条件によってはお腹を切らず、胃カメラを用いた内視鏡治療で切除できることがあります。そのため胃がんでは、見つけるならできるだけ早くという意識が非常に重要です。
胃がんの主な症状と自覚症状の注意点
初期には症状がないことが珍しくありません。進行すると、以下のような症状がみられることがあります。
- みぞおちの痛み
- 胃もたれ
- 食欲低下
- 吐き気
- 体重減少
- 貧血
- 黒い便(タール便)
しかし、これらは胃炎や胃潰瘍、機能性ディスペプシアなどでも起こります。つまり、症状だけで胃がんかどうかを判断することはできません。「胃が痛くないから胃がんではない」とも言えません。国立がん研究センターも、胃がんは早期には自覚症状がほとんどなく、進行しても無症状の場合があるとしています。
胃がんとヘリコバクター・ピロリ菌の関係
胃がんを考えるうえで非常に重要なのがピロリ菌です。ピロリ菌感染が長期間続くと、慢性的な胃炎が起こり、胃粘膜の萎縮などが進みます。こうした胃粘膜の変化は、胃がんが発生しやすい背景となります。
そのため、ピロリ菌感染が確認された場合には、適切な除菌治療を行うことが重要です。ただし、ピロリ菌を除菌すれば胃がんリスクがゼロになるわけではありません。長年の感染によってすでに萎縮性胃炎が進んでいる方では、除菌後も胃がんが発生する可能性があります。そのため、除菌したかどうかだけでなく、胃粘膜がどの程度萎縮しているかまで評価することが重要です。
専門医が解説する症状の強さとがんの進行度
患者さんから、「こんなに胃が痛いから、かなり進んだ病気ではないでしょうか?」と聞かれることがあります。逆に、「何も症状がないから、がんは大丈夫ですよね?」と言われることもあります。しかし胃がんでは、症状の強さと病気の進行度が必ずしも一致しません。
早期胃がんが偶然胃カメラで見つかることもあれば、ある程度進行していても症状が乏しいことがあります。そのため消化器診療では、「どれだけ痛いか」だけで判断せず、リスクや経過を踏まえて胃カメラを検討します。
食道がんの特徴と日本人に多い組織型
食道は、のどから胃まで食べ物を運ぶ約25cmほどの管状の臓器です。日本の食道がんの多くは、食道粘膜から発生する扁平上皮がんです。食道がんも初期にはほとんど症状がないことがあります。進行すると食道の内腔が狭くなり、「固いものが飲み込みにくい」「食べ物が胸につかえる」といった症状が現れます。
日本食道学会の現行ガイドライン(2022年版 第5版)に基づき、診断から内視鏡治療、手術、化学放射線療法まで体系的な治療が行われます。
食道がんの進行に伴う症状と身体の変化
進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 食べ物がつかえる
- 飲み込みにくい
- 胸の違和感
- 飲み込むと痛い
- 体重減少
- 声がかすれる
- 咳が続く
特に、以前は普通に食べられていたのに最近固いものが引っかかるという変化は重要です。ただし、症状が出てからでないと食道がんが見つからないわけではありません。胃カメラでは食道も観察するため、症状のない早期食道がんが偶然見つかることもあります。
食道がんのリスク要因とアルコール代謝体質
日本の食道扁平上皮がんでは、特に喫煙と飲酒が重要なリスク因子です。さらに、アルコールを分解する能力には個人差があります。
お酒を飲むと顔がすぐ赤くなる「フラッシャー」の方の一部では、アセトアルデヒドを分解するALDH2の働きが弱く、飲酒による食道がんリスクが高まることが知られています。つまり、「お酒に強いか弱いか」だけではなく、どのようにアルコールを代謝する体質なのかも食道がんリスクと深く関係します。
胃カメラで発見可能な消化管疾患
胃がん・食道がんのどちらも、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が非常に重要です。胃カメラでは、以下の順に直接粘膜を観察します。
| 検査順序 | 観察部位 |
|---|---|
| 1 | 食道 |
| 2 | 胃 |
| 3 | 十二指腸 |
小さな病変では、通常の白色光だけでなく画像強調観察などを組み合わせ、色や表面構造、血管パターンの変化を詳しく確認します。疑わしい部分があれば組織を採取し、病理検査でがん細胞の有無を確認します。「胃カメラ」という名前ですが、実際には食道がんを見つける検査でもあるのです。
早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
病変の深さ、大きさ、組織型など一定の条件を満たす早期がんでは、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などで治療できることがあります。ESDは胃カメラを使い、がんを含む粘膜を切除する治療です。お腹を切る手術に比べて胃や食道を温存できることが大きなメリットです。
一方、がんが深くまで入り込んでいる場合やリンパ節転移の可能性が高い場合には、手術や薬物療法、放射線治療などが必要になります。胃がんの治療方針は、2025年3月に改訂された胃癌治療ガイドライン(第7版)で最新の戦略が整理されています。
症状が出る前に胃カメラを受けるメリット
消化器診療をしていると、「胃カメラが苦手なので、症状が出たら受けようと思っています」という方もいます。しかし、胃がん・食道がんでは、症状が出る前の段階で見つけることに大きな意味があります。
早期なら内視鏡治療で対応できる病変でも、進行すれば大きな手術や抗がん剤治療が必要になることがあります。そのため胃カメラは、症状のない早期がんを発見する検査としての役割も持っています。
胃カメラ検査が推奨される対象者
特に以下に該当する場合には、胃カメラについて一度相談する価値があります。
- 胃痛や胃もたれが長く続く
- 食べ物がつかえる
- 体重が意図せず減っている
- 貧血を指摘された
- 黒い便が出る
- ピロリ菌感染歴がある
- 萎縮性胃炎を指摘されている
- 家族に胃がんの方がいる
- 喫煙・飲酒習慣が長い
検診として胃カメラを受ける頻度は年齢やリスク、自治体の制度によって異なるため、個別の状況に合わせた相談が大切です。
早急な受診が推奨される注意すべき症状
次のような症状がある場合には、早めの評価をおすすめします。
- 食べ物がつかえる・飲み込みにくい
- 吐血した
- 黒い便が出る
- 原因不明の貧血
- 意図しない体重減少
- 繰り返す嘔吐
- 胃痛が長期間続く
- 食欲低下が続く
大量の吐血や黒色便に加えて、強いふらつきや意識障害などがある場合には、通常の外来を待たず緊急受診が必要です。
胃がん・食道がんの早期発見に向けて
胃がんも食道がんも、進行するとさまざまな症状が現れます。しかし本当に重要なのは、症状が出る前あるいは軽いうちに見つけることです。胃がんではピロリ菌感染や萎縮性胃炎、食道がんでは飲酒や喫煙など、それぞれ重要なリスクがあります。
どちらのがんも胃カメラで直接粘膜を観察できます。「胃が痛くないから大丈夫」「食べられているから大丈夫」ではなく、リスクに応じて適切に検査を受けることが大切です。胃カメラで早期の段階から見つけることが非常に重要です。
