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発作性上室頻拍とは?突然始まる動悸の原因・症状・治療を循環器専門医が解説

「突然、心臓がものすごい速さでドキドキし始める」「しばらくすると、スイッチを切ったように急に元に戻る」。このような特徴的な動悸を起こす代表的な不整脈が、発作性上室頻拍(PSVT:Paroxysmal Supraventricular Tachycardia)です。

発作性上室頻拍は、心臓の上側にある心房や房室結節付近の電気信号がぐるぐる回り続けることで、突然脈が速くなる不整脈の総称です。多くの場合、直ちに命にかかわる不整脈ではありません。しかし、発作を繰り返したり、動悸が強く日常生活に支障をきたしたりする場合には、薬物治療やカテーテルアブレーションによって治療することができます。

発作性上室頻拍(PSVT)の仕組みと原因

正常な心臓では、右心房にある「洞結節」から規則正しい電気信号が発生し、その信号が心房から房室結節、心室へと一方向に伝わります。発作性上室頻拍では、心臓の中に電気信号が繰り返し回る「電気のループ」ができることで、頻拍が持続します。この仕組みを医学的にはリエントリーと呼びます。

例えるなら、普段は一本道を進んでいる電気信号が、あるきっかけで環状道路に入り込み、そこを高速で何周も回り続けているような状態です。その結果、心拍数が急に上昇します。

発作性上室頻拍の主な種類

房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT) 心房と心室の間にある「房室結節」付近に、電気が伝わりやすい経路と伝わりにくい経路が存在し、それらを利用して電気がぐるぐる回ることで起こります。成人における代表的なタイプです。
房室回帰性頻拍(AVRT) 心房と心室の間に、通常の房室結節とは別の電気の通り道である副伝導路が存在し、その副伝導路を利用して電気が旋回することで頻拍が起こります。WPW症候群に関連して起こる場合があります。

発作性上室頻拍における特徴的な症状

最も特徴的なのは、突然始まり、突然止まる規則正しい動悸です。患者さんからは、「スイッチが入ったように突然始まった」「胸の中で機械が動いているようだった」「突然ドドドドッと脈が速くなった」「急に何事もなかったように戻った」と表現されることがあります。

発作中に伴うことのある症状
  • 胸部不快感
  • 息苦しさ
  • めまい
  • 冷や汗
  • 脱力感
  • 不安感
  • まれに失神

特にAVNRTでは、頻拍は多くの場合規則正しく、突然始まり突然終了することが特徴です。

通常の頻脈と発作性上室頻拍の違い

循環器診療では、動悸の始まり方と終わり方をかなり重視します。例えば運動をすると、心拍数は徐々に上がり、休むと少しずつ下がります。これは通常の洞性頻脈でみられるパターンです。一方、発作性上室頻拍では、正常な脈から突然150~200回/分前後に跳ね上がり、また突然正常に戻るという切り替わり方をします。

そのため診察では、「動悸は突然始まりましたか?それとも徐々に速くなりましたか?」と質問することがあります。これは単なる問診ではなく、不整脈の種類を推測する重要な手掛かりなのです。

なぜ突然不整脈の発作が始まるのか

発作のきっかけになることが多いのが期外収縮です。普段は問題なく電気信号が流れていても、偶然いつもより早いタイミングで電気が入ることで、心臓の中に存在していた「電気が回れる回路」に信号が入り込みます。すると電気がその回路をぐるぐる回り始め、頻拍になります。

つまり発作性上室頻拍は、「もともと存在する電気回路に、あるタイミングでスイッチが入る」と考えると理解しやすいでしょう。

発作性上室頻拍の緊急性と危険度

多くのPSVTは、心臓そのものに大きな異常がなければ、直ちに生命を脅かすものではありません。一方で、発作中に血圧が低下したり、強い胸痛、呼吸困難、意識障害などを伴ったりする場合には緊急対応が必要です。非常に速い頻拍が長時間持続する場合や、もともと心臓病がある場合には心臓への負担が大きくなることがあります。そのため、心電図、症状、年齢、基礎心疾患などを総合して評価します。

動悸の発作が起きた際の対処ステップ

  1. 迷走神経刺激手技を試みる
    息を止めて腹部に力を入れる「バルサルバ手技」などで迷走神経を刺激すると、頻拍が停止することがあります。具体的な方法は事前に医師に相談してください。
  2. 症状の程度を冷静に判断する
    強い胸痛、呼吸困難、意識が遠のくような感覚がある場合は、無理をせず救急要請を検討してください。
  3. 医療機関を受診する
    医療機関では、アデノシンやATPなどの薬剤投与、または状況に応じた処置が行われます。

正確な診断のための検査と心電図記録

発作性上室頻拍の診療で非常に重要なのが、発作中の心電図を記録することです。病院を受診したころには治っていることも多いため、発作時の記録が診断への近道になります。

12誘導心電図 病院で行う標準的な心電図検査です。
ホルター心電図 24時間の心電図を記録し、日常生活中の変化を捉えます。
携帯型心電計・スマートウォッチ 発作が起きたその場で、患者さん自身が心電図波形を記録できる機器です。

不整脈専門医による診断のポイント

「発作のとき心拍数は何回でしたか?」という情報も大切ですが、診察では「始まりと終わりは突然でしたか?」という点も同等に重視します。心拍数だけでは不整脈の種類までは確定できないため、可能であれば心電図波形そのものを記録することが重要です。発作の始まり方、終わり方、規則正しさ、持続時間、状況を組み合わせることで、不整脈の正体が見えてきます。

発作性上室頻拍の主な治療選択肢

症状が軽く、発作頻度も少ない場合には経過観察を選択することがあります。一方、発作を繰り返す、長時間続く、救急受診を繰り返している、日常生活に支障が出ているといった場合には積極的な治療を検討します。

治療法には薬物療法のほかに、カテーテルアブレーションがあります。ガイドラインでも、症候性・再発性のAVNRTやAVRTではカテーテルアブレーションが重要な治療選択肢に位置づけられています。

根治を目指すカテーテルアブレーション

足の付け根などの血管から細いカテーテルを心臓まで進め、原因となる電気回路を治療する方法です。AVNRTでは房室結節周囲の回路の一部、AVRTでは副伝導路が治療対象になります。発作性上室頻拍は、発作を起こしている電気回路そのものを治療できる可能性がある不整脈です。繰り返す動悸でお悩みの方は、一度不整脈専門医に相談する価値があります。

繰り返す動悸でお悩みの方へ

発作性上室頻拍は、普段の心電図が正常でも発作を繰り返すことがあります。そのため、「病院で心電図を撮ったけれど正常だったから大丈夫」とは限りません。突然始まり突然止まる規則正しい動悸を繰り返す場合には、発作中の心電図を記録することが診断への第一歩です。

「動悸を我慢する」のではなく、「何の不整脈なのかを確認し、その人に合った治療を選ぶ」ことが大切です。

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