潰瘍性大腸炎とは?血便・下痢の原因、検査・治療を専門医がわかりやすく解説
「血便が続いている」「下痢が何週間も治らない」「潰瘍性大腸炎と言われたけれど、ずっと治療が必要なの?」といった不安を抱えてはいませんか。このような場合に考えられる病気の一つが潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)です。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こり、下痢、血便、腹痛などを繰り返す炎症性腸疾患(IBD)の一つです。日本では指定難病に含まれています。現在のところ、内科治療だけで完全に治し切る方法はありませんが、5-ASA製剤、生物学的製剤、JAK阻害薬など治療選択肢は大きく増えており、適切に炎症をコントロールできれば日常生活を維持できる方も多くいます。
大切なのは、症状が改善したときも「治った」と自己判断せず、再燃を防ぎ、大腸粘膜の炎症をできるだけ抑えた状態を維持することです。
潰瘍性大腸炎とはどのような病気か
潰瘍性大腸炎では、大腸の最も内側にある粘膜を中心に炎症が起こります。典型的には、直腸から始まり、口側へ連続的に炎症が広がるのが特徴です。炎症の広がりによって、主に以下のタイプに分類されます。
| 直腸炎型 | 直腸を中心に炎症があるタイプ |
|---|---|
| 左側大腸炎型 | 直腸から左側の大腸まで炎症が広がるタイプ |
| 全大腸炎型 | 大腸の広い範囲に炎症が及ぶタイプ |
潰瘍性大腸炎は、症状が強くなる活動期と、炎症が落ち着く寛解期を繰り返すことがあります。日本消化器病学会のガイドラインでも、診断から寛解維持、がんサーベイランスまでを一連の診療として扱っています。
潰瘍性大腸炎の代表的な症状
代表的な症状には以下のようなものがあります。炎症が直腸に強い場合には、しぶり腹(テネスムス)と呼ばれる「便が出そうなのに出ない」「トイレに行っても少量の血や粘液だけ出る」といった症状が出ることもあります。
- 血便・下痢
- 粘液の混じった便
- 腹痛
- 便意が急に起こる・何度もトイレに行く
- 発熱・貧血・体重減少
一方で軽症では、「血が少しつくだけ」「便が少し緩いだけ」ということもあります。そのため、症状の強さだけで炎症の程度を判断することはできません。
血便の原因は痔だけではない?専門医が解説
診療では「血がつくけれど、前から痔があるので大丈夫だと思っていました」という方に出会います。もちろん、血便の原因として痔は非常に多い病気です。
しかし、若い方でも血便が何週間も続いたり、下痢や粘液便を伴ったりする場合には、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を考える必要があります。特に、痔はあるけれど最近便の回数が増えた、あるいは毎日血が混じるようになったという変化は重要です。「痔がある」という事実と、「今回の血便の原因が痔である」ことは同じではありません。
潰瘍性大腸炎の発症原因
原因は完全には解明されていませんが、現在は遺伝的素因、免疫反応の異常、腸内細菌、環境因子などが複雑に関係して発症すると考えられています。
「食生活が悪かったから」「ストレスが強かったから」という一つの理由だけで発症する病気ではありません。ストレスで症状が悪化することはありますが、ストレスが原因だから気持ちの問題という病気ではなく、免疫系が腸粘膜に持続的な炎症を起こす慢性疾患として理解することが重要です。
感染性腸炎(食中毒など)との違い
潰瘍性大腸炎は、下痢、腹痛、発熱、血便などが出るため、細菌性腸炎などの感染性腸炎と症状がよく似ています。特に初発時には、感染症との鑑別が重要です。便検査などを行い、感染症の可能性を確認しながら診断します。
また、すでに診断されている患者さんでも、再燃だと思ったら感染性腸炎だったということがあります。急に症状が悪化したときには「いつものこと」と決めつけず、適切に評価することが大切です。
潰瘍性大腸炎の検査と診断方法
診断の中心となるのは大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。必要に応じて組織を採取する病理検査や、以下の検査を組み合わせて炎症の程度を評価します。
| 大腸カメラ | 炎症の範囲、粘膜の赤み、血管模様の消失、びらん・潰瘍、出血のしやすさを確認します。 |
|---|---|
| 血液・便検査 | 炎症反応の数値や、便中カルプロテクチンなどを測定し、他の病気との鑑別に用います。 |
症状がなくても要注意?粘膜治癒の重要性
患者さんから「血便も下痢もなくなったので、もう薬をやめてもいいですか?」と聞かれることがあります。しかし、症状が改善していても、大腸粘膜に炎症が残っていることがあります。
近年の治療では、症状がなくなる臨床的寛解だけでなく、内視鏡で炎症が十分に改善しているかという内視鏡的改善(粘膜治癒)が重視されています。自覚症状だけで薬を中止しないことが、長期的な安定には不可欠です。
潰瘍性大腸炎の主な治療薬
治療は、炎症の範囲と重症度に応じて選択します。
5-ASA製剤
軽症から中等症の治療で非常に重要なのが、メサラジンなどの5-ASA製剤です。内服薬のほか、直腸炎などでは坐薬や注腸製剤を使うことがあります。寛解を維持して再燃を防ぐ目的でも継続的に使用されます。
ステロイド
炎症が強い場合には副腎皮質ステロイドを使用します。強い炎症を抑える効果がありますが、長期間の寛解維持目的で使い続ける薬ではありません。
生物学的製剤・低分子薬
従来治療で十分な効果が得られない場合には、抗TNFα抗体、抗インテグリン抗体、抗IL-12/23薬、JAK阻害薬など、複数の選択肢があります。病気の重症度や年齢、合併症のリスクなどを考慮して治療を選びます。
寛解期でも薬の継続が必要な理由
潰瘍性大腸炎では、炎症を抑える寛解導入と、良い状態を保つ寛解維持を分けて考えます。症状が良くなったあとも適切な治療を続けることで、再燃を防ぐことが重要です。「薬を飲んでいるから良い状態を保てている」可能性があるため、良くなった=薬が不要とは限りません。
食事療法と日常生活の注意点
寛解期には一律に厳しい食事制限を続ける必要はありません。活動期で下痢や腹痛が強い場合には、脂質の多い食事や刺激物を控える調整をします。
一方、症状が落ち着いているときは栄養バランスを保ち、必要以上に食品を禁止しないことも大切です。「これを食べれば治る」という特定の食品はありませんが、自分に合った食生活を見つけることが大切です。
大腸がんのリスクと定期検査
長期間にわたり広い範囲に炎症がある場合、一般の方と比較して大腸がんのリスクが高くなることがあります。このため、発症から一定期間(おおむね7〜10年以上)が経過した方は、症状がなくても定期的なサーベイランス大腸内視鏡を行います。
「血便がないからカメラは不要」ではなく、がんを早期発見するための検査として、適切な間隔で受けるようにしましょう。
腸管外合併症(腸以外の症状)
潰瘍性大腸炎は大腸の病気ですが、患者さんによっては腸以外の場所に症状が出ることがあります。これを腸管外合併症と呼びます。診療では便の状態だけでなく、以下のような全身の症状も確認します。
- 関節の痛みや腫れ
- 皮膚の症状(結節性紅斑など)
- 眼の痛みや充血
- 肝胆道系の異常
早急な受診が必要な重症化のサイン
以下のような症状がある場合には、炎症が急激に強くなっていたり、貧血や脱水を伴っていたりする可能性があります。早期の集中的な治療が必要な場合があるため、速やかに受診してください。
- 血便が急に増えた
- 1日に何度も激しい下痢をする
- 高熱や強い腹痛がある
- 動悸・息切れ・ふらつきがある
- 水分が摂取できない
まとめ:適切な治療で日常生活を維持するために
潰瘍性大腸炎は慢性疾患ですが、治療法は大きく進歩しています。大切なのは、血便があるときだけ治療することではありません。
腸の炎症そのものを長期的にコントロールし、再燃や入院、大腸がんのリスクを減らしながら、普段の生活を維持することが治療の目的です。血便や下痢が続く、便の回数が急に増えた、夜間にトイレで目が覚めるといった症状がある場合は、消化器内科で一度評価を受けることをおすすめします。
