大腸がんとは?初期症状・便潜血・大腸カメラ・治療を専門医がわかりやすく解説
「便潜血検査で陽性と言われた」「最近、血便が出る」「便が細くなった気がする」。このような症状や健診結果で心配になる病気の一つが大腸がんです。
大腸がんは、大腸の内側を覆う粘膜から発生する悪性腫瘍です。大腸は大きく結腸と直腸に分けられるため、大腸がんには結腸がんと直腸がんが含まれます。治療方法は、がんの深さやリンパ節・他臓器への転移などによって、内視鏡治療、手術、薬物療法などから選択されます。大腸がんで特に知っていただきたいのは、早期ではほとんど症状がないことがあるという点です。
そのため、「お腹が痛くないから大丈夫」と過信せず、検診や便潜血検査、必要に応じた大腸カメラで早い段階から見つけることが重要です。
大腸がんが発生するメカニズム
大腸がんの多くは大腸粘膜から発生します。代表的な経路の一つが、良性の腺腫という大腸ポリープが徐々に変化し、がんへ進む経路です。
そのため、大腸カメラで腺腫などの前がん病変を発見して適切に切除することには、すでにあるがんを見つけるだけでなく、将来の大腸がんを予防するという意味があります。
また、大腸がんのすべてが典型的な腺腫から発生するわけではなく、鋸歯状病変など異なる経路から発生するものもあります。大腸カメラでは隆起したポリープだけでなく、平坦で目立ちにくい病変も丁寧に観察することが重要です。
早期発見のために知っておきたい大腸がんの初期症状
早期大腸がんでは、症状がないことも少なくありません。病状が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 血便(便に血が混じる)
- 便秘や下痢を繰り返す
- 便が以前より細くなる
- 便が残っている感じ(残便感)がする
- 貧血、腹痛、お腹の張り、嘔吐
ただし、がんのできた場所によって症状は異なります。右側結腸のがんでは目立った血便よりも貧血で見つかることがあり、直腸やS状結腸など肛門に近い部位では血便や便通異常が目立つ傾向にあります。
専門医からの豆知識:血便を痔と決めつけないこと
診療では、「血がついたけれど、たぶん痔だと思います」というお話をよく伺います。もちろん、血便の原因として痔は非常に多い病気ですが、痔がある人にも大腸がんはできます。
「以前から痔があるから今回の出血も痔だろう」と自己判断するのではなく、いつから出血したか、便に血が混じっているかなどを確認することが大切です。特に血便を繰り返す場合や、これまでとは違う出血が見られる場合には、一度大腸の中を詳しく確認する価値があります。症状がある場合は、次回の検診を待たずに医療機関を受診してください。
大腸がん検診(便潜血検査)の正しい理解
日本の大腸がん検診では、40歳以上の男女を対象に年1回、便潜血検査2日法が推奨されています。これは、便の中に目では見えない微量の血液が含まれていないかを調べる検査です。
大腸がんや大腸ポリープから出血すると便潜血陽性になることがあります。簡便でありながら、大腸がんによる死亡を減らす効果が確認されている非常に重要な検査です。
便潜血が陽性だった場合
「もう一度便検査をして確認したい」というお声もありますが、それはおすすめできません。大腸がんやポリープからの出血は、毎日起こっているとは限らないからです。
「1回目は陽性だったけれど、2回目は陰性だった」としても、大腸の病変を否定することにはなりません。便潜血検査で要精密検査となった場合には、速やかに大腸内視鏡検査(大腸カメラ)による精密検査を受けてください。
便潜血が陰性なら安心か?
答えはいいえです。便潜血検査は優れた方法ですが、すべての大腸がんを100%見つけられるわけではありません。がんがあっても、検査した日に出血していなければ陰性(判定漏れ)になることがあります。
そのため、「血便が出る」「便が細くなった」「原因不明の貧血がある」「排便習慣が急に変わった」といった症状がある場合は、便潜血の結果に関わらず医療機関で相談してください。
大腸がんの診断から治療までのステップ
大腸がんの疑いがある場合、以下のような流れで診断と治療の計画を立てます。
-
大腸カメラ(内視鏡検査)
内視鏡を用いて大腸粘膜を直接観察し、疑わしい病変があれば組織を採取して病理検査を行います。 -
精密検査と病期(ステージ)診断
がんと診断された場合、CT検査などを用いて、がんの深さ、リンパ節転移の有無、他臓器への転移を調べます。 -
治療方針の決定
病期(ステージ)や病変の性質、全身状態をもとに、最適な治療方法(内視鏡、手術、薬物療法など)を決定します。
大腸がんの治療方法
治療は病期によって異なります。がんが粘膜の浅い層にとどまり、リンパ節転移のリスクが低い場合は、内視鏡治療が選択されます。
| ポリペクトミー | 盛り上がった形状のポリープやがんを、電気メスの輪(スネア)で焼き切る手法です。 |
|---|---|
| EMR | 内視鏡的粘膜切除術。病変の下に液体を注入して持ち上げてから切除する手法です。 |
| ESD | 内視鏡的粘膜下層剥離術。大きな病変を専用の処置具で少しずつ剥離して一括切除する手法です。 |
一方、がんが深く入り込んでいたり、リンパ節転移の可能性が高かったりする場合には、手術による切除が中心となります。さらに病期によっては、手術後の再発予防や、転移・再発に対する薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)を組み合わせます。薬剤の選択では、腫瘍の分子生物学的特徴(RAS、BRAF、MSIなど)が関わることがあります。
専門医が意識する「見つけにくい病変」への取り組み
大腸がんは「大きなできもの」というイメージがあるかもしれませんが、実際には平坦なものや、周囲の粘膜と色が似ていて目立ちにくい病変も存在します。そのため大腸カメラでは、単にスコープを挿入するだけでなく、抜きながら粘膜を丁寧に観察することが極めて重要です。
当院では、病変の個数だけでなく、形・表面構造・色調・血管模様などを細かく確認し、その性質を正確に判断するよう努めています。
遺伝性の大腸がんについて
大腸がんの多くは遺伝性ではありませんが、一部にはリンチ症候群や家族性大腸腺腫症(FAP)など、遺伝的要因が強く関係するケースがあります。
- 家族に大腸がんの方が複数人いる
- 若い年齢で大腸がんを発症した家族がいる
- 若いうちから多数の大腸ポリープがある
このような場合には、遺伝性大腸がんの可能性を考慮する必要があります。最新の遺伝性大腸癌診療ガイドラインに基づいた適切な診療が求められます。
大腸がんから体を守るために
大腸がんを完全に予防する方法はありません。しかし、定期的に検診を受け、異常があれば放置せずに大腸カメラを受けることで、早期発見・早期治療につなげることが可能です。
また、大腸カメラで腺腫(ポリープ)を適切に切除することは、将来のがん化を防ぐという意味で強力な予防策になります。一度ポリープを切除した方は、その数や大きさに応じて、適切な間隔で定期検査を継続しましょう。
このような方は一度ご相談ください
大腸がんは早期には自覚症状がありません。症状が強くなってから見つけるのではなく、症状のない段階で対処することが重要です。以下に該当する方は、消化器内科の受診をおすすめします。
- 便潜血検査で陽性と判定された
- 血便が出る、または便に血が混じる
- 便が細くなった、便秘や下痢が増えた
- 原因不明の貧血や、急な体重減少がある
- 家族に大腸がんの方がいる、または過去にポリープを切除した
異常があれば大腸カメラで確認し、ポリープや早期がんの段階で適切に治療すること。これが、大腸がんから健康を守るための最も確実な道です。
